問題『なぜ肩が上がってしまうのか/力が入ってしまうのか』

べつに肩を上げたいわけじゃないのに上がってしまう。
肩に力を入れたいわけじゃないのに力が入ってしまう。
 
みんな、そう思っていると思うのです。
 
やりたくてやっているわけじゃないんだ。
私の肩はそうなってしまうんだよ、と。
 
  
どうしてそんなことが起きてしまうんでしょうか。
その「なぜ」が分からないまま、
 
「私の肩よ、下がりなさい」
「私の肩よ、鎮まれ」
 
と思っても、肩さんは思うように動いてくれません。
 
つまり肩がおかしな行動をしているからといって、肩に直接命令しても、命令を聞くのは「意識し続けているときだけ」であり、意識が抜けるとまた元通りになってしまいます。
 
ここがなかなかまだまだ理解されておらず、肩を直接なんとかしようと考える人が一般の方はもちろん、身体に関連するあらゆるプロも勘違いしているなと私は思います。
 
●肩さんは被害者
 
実は、肩自身も上がりたくて上がっているのではないし、力みたくて力んでいるのではありません。そうせざるを得ない状況にさせられているのです。
 
実は、肩を押し上げている者が存在します。
 
それは、肋骨さんです。
 
肋骨さんにも「本来あるべき形」というものがあるのですが、その形が崩れてしまうことで、肩甲骨さんが本来の居場所で落ち着いていられなくなり、上に逃げるしかなくなるのです。正しい場所に入れないと、肩をすくめる筋肉が緊張しやすくなり、自然と力みやすくなってゆきます。
 
そしてもう一つ、肩を力ませる者は、手首や手の指たちです。
 
人は生活のあらゆるシーンで手を使います。
その使い方に悪いくせがつくと、その影響は手首→肘→肩(上腕骨+鎖骨+肩甲骨で成る関節)や肋骨まで及びます。 
 
つまり、「肋骨が崩れてしまうのは手の使い方にもよるし、肋骨が崩れるから手がうまく使えない」という相互作用が起きているのです。
 
そうなると肩さんはどんどん力みやすくなり、そのうちの肩甲骨さんはどんどん上に追いやられます。
 
肩甲骨さんが本来の場所にいると、脇の下にある筋肉である「前鋸筋」「僧帽筋の中部/下部繊維」「広背筋」などが常に活躍し、あなたを背後からどっしりサポートしてくれます。
 
でも肩甲骨さんが上に追いやられることで、それらの筋肉は働けなくなるので、あなたを美しく保持する安定のサポート力はなくなり、肩をすくめる筋肉さんが必要以上に働かされます。
 
・・
 
こんなふうに書けば、少しは理解されやすくなるでしょうか。
 
それでも「なぜ自分の身体が思い通りに動かないのか」を考えるとき、人は結果としてあらわれているものを直接原因だと考えてしまいがちです。そりゃそうです。前提知識がないままこういう答えには行きつかないです。なので動作のことは、動作がよくわかっているプロの知識が必要であると私は思うのです。
 
ちなみに、「そうか、肩さんが荒ぶっているのは肋骨、お前のせいか!」
と思うのも間違いです。
 
肋骨さんは肋骨さんで、骨盤さんと背骨さんの関係性の結果、形が崩れているわけです。
 
「では、骨盤と背骨、お前のせいか!」
というのも、ちょっとかわいそうです。
 
骨盤さんは確かに座ることが多い人にとって、座っている間は身体の土台として働くので、一番原因的な存在ではあります。だから骨盤を正しく使うことは身体のあらゆる動きにとって幸せをもたらします。(このとき、骨盤と背骨の関係性と骨盤と大腿骨の関係性が重要なので、骨盤だけフォーカスするのはまたちょっとズレていると思いますけどね)
 
人間は歩く動物なので、一番の土台はやはり足です。
 
そのうち足指さんの役割はものすごく大きいです。
 
その足指さんも平で硬すぎる地面やら身体にあっていない靴やらでうまく使えず、そのうち指の使い方を忘れ、無茶苦茶になってしまっているということを考えると、足指さんも被害者と言えるかもです。。
 
というか、加害者がべつにいるわけではないのですが、つまり言いたいことは、身体は下から作り上げていかないと、上だけなんとかしようとしても非合理的ですよということです。
 
ちなみにこの変形は赤ちゃんが立ったときから始まります。私は小さなお子さんをみることが少ないので分からないことが多いですが、今までの経験で考えても、5,6歳の時点ですでに身体の使い方のくせができ、脚や肩などに変形が見られるケースは多いと思います。昨今は正しい使い方を子供に教える存在がほとんどいないでしょうから😭
 
生きていく上でそこまで困らなければ良いんです。
しかし、生活がままならないほど身体で困る人はたくさんいます。
 
それに単なる故障などではなく、「不調の原因の一つが身体の使い方であるかもしれない」という風にはなかなか想像つかない人がほとんどでしょう。これ関して、食は随分と認知されていると思いますが、身体の使い方も大いに関係すると私は考えています。
 
身体はあなたの一番身近にいる他者です。
 
身体さんを理解してあげると、もちろん身体さんは喜び、快感を発してそのことをあなたに伝え、変化していくでしょう。身体の動きの世界は宇宙同様、面白いですよ。