最上さんの稽古に通い始めて

今日の最上さんのツイート
 
今年の2月から最上さんの定期稽古に通える環境になり、毎回行くたびに文字通り私の身体は育っているということを実感している。
  
  
例えばそれはバーレッスンの感覚ですら以前と何か違う感じがするのだ。より内部を感じながら動くことができるようになっている気がする。(それは物理的な軸とかインナーマッスルを感じながら動くこととは全く違う)
 
まだ数回しか通っていない私だけれど、いや、初心者だからこそのビギナーズラックもあるのだろう。
 
でもそれだけではない。
 
稽古場に11年通われてきた古谷さんが、今週末初めてソロ公演をされる。
 
11年という時間を経て、ソロ公演を迎える直前という人生で一度しかないであろう特別な時期に、今の稽古場生は幸運にも立ち会うことができ、一緒に稽古が受けられたということ。これは私にとってとんでもないギフトだ。身体が育たないわけがない。
 
だから先日の稽古は私にとって余計に特別だった気がする。
 
稽古は二手に分かれて、稽古をする側と見る側に分かれて行われるが、古谷さん率いる先輩組の床稽古のとき、みんなが立っている姿を見るだけで愛おしい気持ちが湧いてきた。(注:先輩組と称したのは便宜上あって最上さんの言葉ではありません)
 
そして後輩組は先輩たちが作った場のエネルギーがある状態から床稽古を始める。
 
立つ→寝る→立つという動きを30分ほどかけて行う。
 
それだけなのにどうしてこんなにも満ち溢れていくのか。
 
先日の私は前回よりも皆さんに見てもらうことを受け入れることができていた。なのでプロセスの中で前をしっかりむくことができた。これはきっと古谷さんの影響を受けてのことと思う。
 
立ち上がるとき、なぜか強風が吹きはじめた。
 
そしてその強風は私を崖へと追いやった。
 
どうしてそういう展開になったかと言えば、多分、北極のペンギンの群れがとても高いところから海に飛び込もうとしていて、その葛藤する姿を映像としてみたのが影響したのだと思う。(←単純)
 
ただ似たような心境を経験しており。
 
20歳のころ、自宅の亀岡から舞鶴まで110kmを24時間かけて一人で歩いたことがあるが、あのときはまさにペンギンと同じだったと思う。
 
基本的に国道を北上して舞鶴を目指したが、歩き始めて5時間ほど経った21時頃、普通は車しか通らない山のトンネルに差し掛かった時、引き返したいと思うけど、今来た道を戻るなんてありえなくて、進むしかないと観念して進み続けた。その後はほとんど山の中を歩くことになるが、谷が一番怖かった。幽霊や獣なんて全く怖くなく、谷という存在が怖かった。
 
そういう映像と経験によって、今回の展開がやってきたのかもしれない。
 
崖の端っこまで追いやられた私は、実際に経験した状態よりもあっさりと崖から落ちた。そこはあの世で真っ暗な空間。そこに一人の白く光った幽霊が立ち往生していた。
 
「お節介かもしれないけど…」
 
と思いながらも私の両手は彼女へと伸び、立ち上がるのを手伝いたくなった。(のちにご本人が助けたことを喜んでくださったのでよかった)
 
「私は気力体力が有り余ってるから、やっぱり人を助けたいのよねぇ」と思いつつ、無事立ち上がった彼女を見過ごしながら、さらに暗い方へ進み続け、最後はくるりとこの世の方に向き直してみんなの姿を見守りながら床稽古を終えた。
 
稽古の最後のシェアタイムでそのことを話すと、一緒に踊っていたみかこさんが、同じく風を感じていて、私が進んだのと逆方向に進まざるをえなかったと話しておられた。そしてあの世の幽霊を助けているとき、みかこさんはその様子が見えていないのに「反対側で何かすごいことが起きている」と感じていらっしゃったそうで、それは不思議なのだけど、不思議と思えないところもあり、とにかく私はその空間にいれたことが嬉しかった。
 
こんなふうに、最上さんが長年かけて作り上げてこられた場に育てていただいて、なんと幸運で贅沢なことなのだろうと胸がいっぱいになるのである。
 
稽古の帰り、近くの公園の桜をみんなで見に行った。花びらで絨毯ができていて、稽古でバッチリ身体が出来上がっている私たちは、数人のJKをよそ目にすぐさま桜と戯れて寝そべったりした。
 

 
そのとき山川さんと「最上さんの稽古場を通して皆さんとかけがえのない深い繋がりを感じていて、本当に感謝ですよね」ということをお話しした。
 
すると翌日、最上さんが「こうして自分ひとりだけでなく、稽古生の人たちと一緒に世界を新しくしていけるのが、幸せでならない」とツイートしていらっしゃり、みんなが同じ思いを共有しているということが本当に幸せだった。 
 
・・
 
私はこれからどう生きていくのか、今一生懸命考えています。
願わくば、私も最上さんのような、「場」が作れる人間になりたい。
ので、少しずつそれを試みています。
 
たとえ最上さんのいる場所は果てしなくとも、目の前で見本が見れるということは最強の幸運です。
 
舞踏は何をやっているか簡単には分からないので伝わらないことも多々あるでしょうけれども、私はこの経験は必ず世界に還元できると思っています。