施術ダイアローグ〈成功編〉

ダイアローグとは:
「考えをはっきりと述べつつも、自分の主張や立場に固執することなく、互いの言わんとする意味を深く探求する会話」
 
今日は母と私の奮闘記を書いてみます。ここ数年、だんだん母の右足の変形が進み、母趾球と膝の痛みを訴えるようになっていました。
 
 
その都度「ゴルフボールフットケアをしい」「指曲げをしい」「踏ん張って立ちい」「指で蹴ってかかとを高く上げて歩きい」(関西弁)と言いまくり、一緒に歩く機会があれば何気なく歩き方の指導をし、時間があればフットケアをしてあげていました。
 
しかも母は痛い施術を究極に拒否するのでわざわざゴルフボールをつかわず私の手で母の足裏をほぐしてあげていました。指曲げももちろん嫌がるので十二分に時間をかけて相当ほぐしてから拳の関節を曲げてあげます。(ちなみにこれは亜脱臼している関節をはめ込むような作業に近いので確かに痛いです)
 
しかし母は普段、ほとんど自分でケアをしません。
以前「なぜフットケアをしないのか?」と尋ねたことがあるのですが「なんでやろね」とのことでした(笑)
 
しかし先日久々に足をみたら変形が増していて、母趾球が少し腫れていました。
 
私は目の前に痛そうな身体があれば手が勝手に動いてしまう人なので、お風呂から上がってきて髪の毛を乾かそうと座った母の足に向かって何気なくフットケアを始めました。
 
何度も「痛い!」と言われたり「痛みをとるために痛い思いをしなあかんのは何とかならんの!?」とか言われつつ、私が納得いくまで丁寧に施術を行いました。
 
「曲げたら痛いんとちゃうで!反ったら痛いんやで!?」という母に「だからぁ」と痛みが出る構造的な理由を説明し、母を黙らせ…いや、納得してもらいました。
 
すると腫れが小さくなり、反っていた足の形もましになり、先ほどまで痛かった動きをしても痛くなくなってきました。
 
翌日もお風呂から上がってきて髪の毛を乾かそうと座った母の足に向かってフットケアを始めました。
 
連続して的確にケアを行うとさらにぐんと回復します。
痛みもましなのでよりスムーズに施術ができます。
その翌日「足の調子はどうよ?」と聞くと「軽いよ♪」とのことでした(笑)
 
施術をしながら、なぜ痛みが出ているのか、何をどうしたら回復するのかなど説明しました。
 
「このまま何もしなければ必ず膝を故障する。寿命の前に確実に膝が壊れる。水が溜まって痛くて自由に動けなくなるのは嫌でしょう?これをこうすれば故障しないんだし、タダでやれることいっぱいあるし、やればやるほど痛くなくなるんだからちゃんとやりい」と説得すると、「はぁ~い」と(若干ふてくされながら)返事をしてくれました。
 
これは今までで一番よい反応です。
今までは「やる気ないねん」などと言われていましたから(泣)
 
ということで、今回は私の説得がある程度成功したようで、昨日もLINEすると「今からフットケアします😅💦」と言っていました。
 
身内ほど耳を傾けてくれないものだとは思いますが、「このままだと余計に面倒なことになる」と将来のリスクを考えて合理的判断をしてくれたようです。母の身体は恵まれていて(つまり私も恵まれているということなのですが)とても素直に反応する身体です。これは色んな人の身体を触ってきたからこそわかることなので、母自身は全くわからないでしょうけれど、色んな身体を知っている者としては、せっかくの恵みを壊さないようにしてほしいなと思うわけです。
 
というのも、壊れるか壊れないかでは次元が変わります。
身体は一度壊れると、完全に元に戻ることはほぼあり得ません。そして歳を取れば取るほど、また、長年かけてつくられた故障や歪みであるほど回復に時間がかかります。
 
壊れる前に対処するのがもっとも努力がいりません。
しかし、これも私が色んな人の身体を触ってきたからこそ実感することであり、自分の身体のことしか知らない一般の方にはなかなかそこまでの想像ができないものです。
 
そして身体について無知であるために回避できた事態を回避できず、さらに選択した対処が適切でないためにその対処がさらなる事態を引き起こすという連鎖が起きてしまうケースはあちこちで見受けられます。
 
それによって人生の大半を費やしてしまうなら、身体の問題はバカにならない話だと思うのです。
 
・・
 
ということで、今回の収穫は、自分の身体に関心はないけど自由に動ける身体でいたい(人に迷惑をかけたくない)人に効く投げかけは「このままいくと寿命の前に先に関節が壊れる」だなと思いました(笑)
 
老死は避けられないものですし、老死自体は悪者ではありません。
老死を嫌ってアンチエイジングをしたってそれは足掻きにしかなりません。
同世代より少し若く見えることで優越感を感じることができるかもしれませんが、それも一時のものにすぎません。
 
しかしだからといって放ったらかしにするというのもどうかなと思います。
現代は寿命が延びるわりには骨(関節)や脳がもたないということが起きがちです。
色んな生き方があると思いますが、考えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
 
(帰りの車窓から。美しい雲とともに)