呼吸と筋肉と動きの連動が身につくメソッド

私はバレエの要素を使って身体の使い方の指導をします。私自身も、バレエのバーレッスンが好きです。
 
ただ元々は、治療家を目指す初期のころ、動きに関わる骨と筋肉を理解するための一環で、20歳からバレエを習い始めましたから、幼少から稽古を積んでいるバレリーナではありません。
 
  
師はアスリートの故障を回復させるプロですから、私のセルフイメージの中には、どちらかというと、故障からの復帰、パフォーマンスアップを導くトレーナーや不調を回復させる医療従事者的なものがあります。
 
そんな私が身体づくりにおいてバレエが良いと思う点はいくつかあります。
 
1、重力と軸
→バレエは重力に対して身体をどう動かせば良いかという技術の集大成とも言えます。バレエの動きは物理学的に説明することもできるでしょう。ダンサーは重力を頼りに動きの良し悪しを感じ取り、自分の身体に軸を作っていきます。(もちろん一般人も同じ。精度が違うだけ)
 
2、立って行う
→ピラティスが寝技エクササイズ中心、ヨガが寝技&立位&静止エクササイズ中心というなら、バレエは立って動く脚技メインです。(脚技なので手は自由)つまりそれは人間本来の動き(歩行)と直結しているので、あらゆる日常生活はもちろんのこと、色んな場面で役立ちます。(例:サッカーの動きはバレエでほとんど説明ができる)
 
ただし、ピラティスは元々、負傷兵を回復させるために考案された背景があり、そのため本来の動きができなくなった人のリハビリとしてはバレエより優れています。
 
3、バレエの神経回路
→上記2つの点とやや重なるのですが、バレエをきちんと習得すると、バレエの神経回路と言えるようなものが自分の身体にインストールされます。簡単に言うと、何をやってもバレエっぽい所作になるという感じです。「あの子、絶対バレエやってる人だわ」って思う人を街でみかけますよね。ああいう感じです。ママチャリに乗っていても、バレエやってる人というのがわかります。ちなみに、もちろんバレエの神経回路がインストールされている人が具体的に骨をどう動かしているかを説明することもできます。この習得には早くても3年かかります。
 
4、西洋の美しい音楽
→音楽に合わせて身体をコントロールするのがダンス全般に言えることでもありますが、西洋の美しい音楽は多くの人にとって害のない心地よい音楽ではないでしょうか。音楽に詳しくないのでうまく説明できないのですが、バレエの稽古をしているとき、音楽と身体のハーモニーを感じることもできます。その音楽を身体で表現しているのがバレエとも言えるかもしれません。心で感じたものを音楽に合わせて身体で表現する行為が豊かな身体づくりをもたらすと思います。
 
逆に、身体づくりにおいて不要だと思う点もいくつかあります。
 
1、過剰な外旋
→バレエの動きは基本的に膝を外にねじって動かします。これを大腿骨の外旋といいますが、股関節の構造上、大腿骨を外旋するともっとも広い可動域で脚を動かすことができます。またもっとも脚が長くみえるので、舞台に出る人たちの中には、”魅せるための過剰な外旋”をする人もいます。それはその身体にとっては限度を超えた動きになり、続けると筋肉だけでなく靭帯や軟骨まで傷ついてしまうほどの苦痛になってしまいますから、身体づくりの観点からすると不要です。
 
2、トゥシューズ(バレエシューズも)
→稽古で使うのがバレエシューズで、舞台で使うのがトゥシューズです。(男性のバレエダンサーはトゥシューズを履きません。)身体づくりの観点からいうと、トゥシューズはよほど足裏の筋肉が鍛錬されていないと履くべきではないものであると思います。つまり、負担が大きすぎて逆に故障を招く場合が多いということです。トゥシューズを履くことで、足の甲が最大に伸びた状態を強制させるため(足関節の最大底屈)それによってできなかった動きができるようになるということはあります。でも、身体づくりとして使うには素人が我流で履くのはおろか、細心の注意を払ってトレーナーが監督する中で使用する時間を守って練習しないといけないのではないかと思います。(長時間履くと必ず足裏の筋肉がバテて足の骨が変形する)
 
3、レオタード
→これは身体づくりの観点からすると不要であるというだけのことです。好きな人は着用しても良いと思います。ただし、自分の身体に合わないレオタードは、動きを制限させてしまうこともあるので、要注意です。トップスとパンツが分かれていれば、その心配はありません。(あるとすれば、長袖のトップスの場合、肩に制限がかからないよう注意です)
 
4、舞台や衣装や化粧
→これも身体づくりの観点からすると不要であるというだけのことです。バレエのあの世界観が好きになれず、幼少期にバレエをやめたという子供もたまに耳にします。大人になって、バレエの素晴らしさを理解し、やっておけばよかったと後悔する人もいます。また、日本の教室では過度に主体性をなくす方向の厳しい指導をしている教室があるとも耳にするので、実態はどうなのか不明ですが、親としてはそのような部分がネックになることもあるようです。色々と、、、もったいないですね。
 
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と、このような良し悪しがあって、私はその良い部分だけを使って指導しているのですが、そんな背景は関係なく「バレエ」という言葉を使うと、とたんに「難しさ」や「女性主体の踊り」を連想させてしまい、多くの人の関心を阻害してしまうのかもしれない。ということに気づきました。
 
〈呼吸と使うべき筋肉と動きをすべて連動・統合させること〉
これが生徒さんたちに身に付けてほしいと思っている技術です。
(それと、自分でゆがみや故障を回復させる技術も教えています)
そのため、エクササイズは基本スローで行います。
つまり私の指導は、老若男女対応できるものです。
 
私のメソッドの元となる師の先生は、戦時中の医師であり、ジョセフ・ピラティスと同じ志である、〈負傷兵を回復させるため〉に研究されたものです。私はその基礎を受け継いで現代に応用しているのです。なので私はあまり道具を使いません。いつでもどこでも物資なくとも回復させる技術が必要な時代から継承しているからです。
 
「バレエ」というと敬遠してしまう人もいるかもしれませんが、みなさんにももう少し見方を変えてもらえたら嬉しいな、と思って書いてみました。