なぜ足指を使ってふんばって立つ必要があるのか〈かかととの関係から読み解く〉

なぜ足指を使ってふんばって立つ必要があるのでしょうか。
今日はかかととの関係からその理由を述べてみます。

 
かかとの骨の地面につく部分は、丸くなっています。
そのためかかとだけではグラグラしてしまいます。
どの方向にグラつくかというと、左右に対してグラグラしてしまいます。
 
人はカニと違って、前に向かって歩きやすく作られています。
でもかかとは丸いので、左右に倒れる構造になっています。
解剖学でのではこのかかとの機能を〈回内/内反〉〈回外/外反〉と言います。
 
かかとが左右に倒れるのをまっすぐに保とうとするとき、支えになるのが〈足指〉です。
 
5本の指でふんばることで、かかとの位置がまっすぐに保てます。

そうすることで、歩くときも身体の後ろでかかとをまっすぐ持ち上げて、そのまままっすぐ前に運べます。
 
ところが足指でふんばれない人は、(ざっくりいうと)内側に倒れる(回内)クセがついた場合は、脚全体がO脚方向の歪みを助長させ、外側に倒れる(回外)クセがついた場合は、X脚方向の変形をもたらします。(その他、前後・左右の重心によって実際の変形の仕方は変わります)
 
そこで一つ問題なのが、指の構造です。
 
私の足指は比較的、問題のない長さです。
 
 

そのため、ふんばりやすく、左右のブレをしっかりと抑えることができます。
 
でも生まれつき足指が長い人は、指のリーチが長いことで、左右のブレに対する強度が減ってしまいます。
 
逆に、足指が短い人は、指のリーチが短いことで、ふんばる力が弱く、かかとで体重を支えるクセがつきやすくなります。
 
前者は外反母趾、ハンマートゥなどの足指の変形が起きやすいです。
またそれによってタコや魚の目、巻き爪、ひどい角質などにもなりやすいです。
 
特に、人差し指が親指より長い人は、既製品の靴ではぴったり合わないので、どうしても人差し指が靴にあたり、変形をもたらしてしまいます。歩行のフォームも、身体の後ろから母趾の先端を使って地面を蹴るという動きがかなり難しくなります。
→こういう方はどうすればよいか、足の形をみてレッスンで詳しく指導・アドバイスをしています。
 
後者はまず、足の変形としては開帳足になりやすいと思います。
 
またマラソンや体育館で行う競技をやっている人などは特に、足底筋膜炎やアキレス腱損傷なども起きやすいと思います。(足指での衝撃の分散がうまくできないからです)
  
また、かかと重心になることで、膝や腰の故障を招きやすくなります。
左右の衝撃に弱くなることで、特に膝の内側のじん帯の負担が増え、故障に至る場合があります。
 
かかと重心による腰の故障は、歩くときにかかと着地で地面からの衝撃をかかとばかりで受けることによって、衝撃の分散がうまくできず、腰椎に過度な負担がかかるということが考えられます。
 
でも現代人のかなり多くの人が、その足指を本来の役割として使うことができない状態になっています。
 
理由は色々考えられますが、
 
・フラットで硬い地面の上で生活するようになった
 →文明以前は凸凹、不安定な地面だから勝手に指を使うはず
 
・身体に合わない靴を履いてしまう
 →道が舗装され、靴が誕生したが、その靴が個々の足の形に合わず、変形をもたらす要因になる
 
この二つは外せない問題でしょう。
 
夏時期はサンダルが流行りますが、サンダルから指がはみ出ている人を見るたび、ちょっと心が痛みます。私には自分で自分の身体を壊しているように見えるので…。そして多分、本人がそれがいかに身体全身に悪影響かということを知れば、やめる人が多いと思うからです。
 
つまり、正しい立ち方・歩き方を学んでいないためにその人の想像が及ばないところまで問題が波及しているということに、ほとんどの人が関心を持っていないことに時々悲しくなります。
 
社会システムや現代の様々な生活と、本来の人間の身体の自然な動きとは合わない部分があります。
 
そこを無視しすぎている人がだいぶ増えてしまったのか、あるいはその乖離がいよいよやばくなってきたのかという風に私には見えるのです。
 
昔はさほど大した問題ではなかったのだろうと思います。
でも、核家族になって、村は過疎化して都市に人口が集中して、公害問題が沢山出てきて、インターネットが誕生して、経済(発展からの崩壊、グローバル化など)ももちろんその背景にあり、それらの生活様式の変化が身体にも大いに影響していると思います。
 
しかし現状は、怪我や故障、病気などで身体を悪くして身体に不安を覚えた人や、下半身太りや脚のゆがみなどでコンプレックスを感じている人や、ダンサーやスポーツマンなどでもっとパフォーマンスアップをしたいと思う人など、何か身体の動きに関する情報を得よう思ってアクションを起こした人しか、このような情報にはアクセスできません。
 
私の生徒さんには、病院で働いている方も多数いらっしゃいますが、同僚たちにこのような身体や身体づくりの体験の話をしても、身体に対する見方や捉え方が違いすぎて、それ以上、話を進められなくなるのだそうです。
 
私もそこは昔からずっと感じてきていることで、仕方ないのかなーと思っていましたが、最近は私が諦めてしまってはダメなんじゃないか?とも思っています。
 
一人一人の価値観を尊重した上で、新しい知識や視座をその人の目の前に置くくらいの感覚で、手探りで考えていくのも楽しいもんです。でも、そんなやり方じゃ、関心がない人には全然気づいてもらえないのでしょうけれどね。
 
とかいいつつ、今日は従業員には逆に、「美意識が足りない!」「ツメが甘い!」「全体のバランス!余白のバランス!」とか言って、気づいてほしいことをめちゃ具体的にフィードバックしました(笑)